未来技術観測所FUTURE TECHNOLOGY OBSERVATORY
OBSERVATION NOTE / AI・ロボット

自分の仲間を作るロボット? 実は「生きた細胞」の話でした

ロボットが材料を集めて、もう一台を作る? そんな見出しから想像する工場とは、少し違う実験です。小さな細胞の集まりが、次の仲間を生みました。

30 SECONDS / まず、ここだけ

動いて細胞を集めたら、次の動く集団ができた。その仕組みが面白い。

  • 2021年、生きた細胞で作ったXenobotの自己複製が報告された。
  • 容器に用意された細胞を集めると、新たな動くまとまりができた。
  • AIが活躍したのは、細胞を集めやすい形を探すところ。
この記事の目次
  1. 仲間を作るロボット。その材料は?
  2. 生きた細胞なのに、ロボットなの?
  3. どうやって仲間を作ったの?
  4. 集めるだけなら、形は何でもいい?
  5. その小さな体に、AIが入っているの?
  6. 自己複製なら、そっくり同じものができる?
  7. では、外へ出したら際限なく増える?
  8. 観測所の「ほぇ〜ポイント」
  9. 今回の観測結果
  10. 原論文・出典

「自分で仲間を増やせるロボットができた」

そう聞くと、金属の部品を集め、ネジを締めて、もう一台のロボットを組み立てる姿を想像しませんか。

2021年に話題になったXenobotの研究では、もっと違うことが起きていました。

材料は、生きた細胞。しかも、細胞を集める動きが、次の仲間を作ったんです。 1

仲間を作るロボット。その材料は?

金属のロボットを思い浮かべた二人。研究をのぞくと、容器の中には意外なものがありました。

材料に注目してみよう
オレンジの人が小さなおもちゃの金属ロボットを持ち、青い人が首をかしげる。
1 / もう一台、組み立てるの?

オレンジの人「部品を集めて、自分の仲間を作るのかな?」

「自己複製ロボット」と聞くと、こんな工場を想像しがちです。2021年のXenobot研究で使った材料は、もっと意外でした。

二人が拡大鏡で、容器の中の小さな柔らかい細胞の集まりを見ている。
2 / 材料は、生きた細胞

青い人「えっ、カエル由来の細胞でできているの?」

Xenobotは、生きた細胞で作った小さな動くまとまり。金属の腕やモーターで動くロボットではありません。

容器の中にばらばらの細胞と、細胞を集める大きめのC字形のまとまりがある。
3 / 用意された細胞を、集める

オレンジの人「材料を作るより、動いて集めるんだね。」

研究者が容器に用意した細胞を、Xenobotが動いて集めます。どんな形なら集めやすいかを探すところで、AIも使われました。

二人が、元のC字形とは違う丸い細胞集団のできた容器を見ている。
4 / 次の動くまとまりへ

青い人「集めた細胞が、新しい仲間になるのか!」

集まった細胞は数日かけて、新たな動く集団になります。親の形を完全コピーしたり、際限なく増えたりしたという結果ではありません。

人物・細胞・容器はAI生成の説明用イラストで、顕微鏡写真ではありません。細胞の色や大きさは実物を表しません。研究者が材料と環境を準備した2021年のXenobot研究を紹介しています。 [1]

生きた細胞なのに、ロボットなの?

2コマ目で二人が見つけたのは、生きた細胞でした。ここで「ロボット」と呼ばれているものを、もう少し見てみましょう。

Xenobotは、カエル由来の細胞を組み合わせて作った、小さな動くまとまりです。1

「ゼノボット」と読みます。金属の腕やモーターが付いているわけではありません。

名前だけ聞くと機械の姿が浮かびますが、ここでは生きた細胞を材料に、動くものを作っているんですね。

どうやって仲間を作ったの?

まず、研究者が容器の中に、ばらばらの細胞を用意します。

そこをXenobotが動き回ると、細胞を集めます。集められた細胞がまとまり、数日かけて、新しい動く集団になるという結果でした。1

研究者が準備した細胞を、動く細胞集団が集め、次の動く集団ができる実験の流れ。
Xenobot研究の仕組みを簡略化。材料の準備を含めて示しています。工業製品の製造工程ではありません。 図の根拠

イメージの入口は、「集める」です。

金属を削って部品を作るのではなく、用意された生きた細胞を集める。そのまとまりが、また動くものになるわけです。

集めるだけなら、形は何でもいい?

そこで、形が効いてきます。

研究では、どんな形なら細胞を集めやすいかをAIで探索しました。研究機関の説明では、形によって次の世代を作る能力が変わることが紹介されています。1

同じ材料でも、どういう形にするかで働きが変わる。細胞の集団にも、道具の設計のような問いがあるんですね。

その小さな体に、AIが入っているの?

いいえ。この話でAIが使われたのは、形を探す側です。1

設計を考える道具にAIを使うことと、完成したものの中にAIを入れることは別ですよね。

Xenobotが自分で計画を立てたり、会話したり、工場を管理したりしたという実験ではありません。

自己複製なら、そっくり同じものができる?

ここでいう自己複製は、次の動く細胞集団を作ることです。親の設計された形が、そのまま完全にコピーされるという意味ではありません。1

スマホで写真をコピーすると、同じファイルがもう一つできますよね。それと同じ感覚で「複製」と読むと、今回の仕組みが見えにくくなります。

何が、どんな材料から、どのように増えたのか。 そこをたどると、研究の面白さが分かります。

では、外へ出したら際限なく増える?

今回の実験では、材料になる細胞も、容器の環境も、研究者が用意しています。際限なく増える結果が示されたわけではありません。1

「自分でできる部分」と「外から用意してもらう部分」があるんです。

ロボットが原料からモーターや半導体まで作り、もう一台を完成させるSFの工場を想像するなら、その間には別の課題がたくさんあります。

観測所の「ほぇ〜ポイント」

次の仲間を作るのに、「動き」と「形」が役立つ。部品を組み立てる機械を想像していたら、登場したのは生きた細胞でした。しかも、どう動き、どう集めるかが次のまとまりを生む。ロボットと生き物の境目を、思わず考えたくなる研究ですね。
OBSERVATION / 今日分かったこと

今回の観測結果

細胞での実験

対象:Xenobotの運動による自己複製

生きた細胞と実験室の条件を使う研究です。ロボットが部品を製造し、どこでも際限なく増える成果ではありません。

観測所の編集上の整理です。実現確率や完成予定年を示す指標ではありません。
SOURCES / 確かめる

原論文・出典

気になった研究は、ここからたどれます。

いつの、どんな研究?2021年のXenobot研究を、研究機関の発表から紹介します。金属製ロボットの自動製造や、人工生命研究全体の総説ではありません。
  1. University of Vermont|Team Builds First Living Robots That Can Reproduce

    2021年11月29日。研究機関の発表本文を確認。材料、細胞を集める仕組み、形の探索、複製の制約を参照。

  2. Kriegman et al.|Kinematic self-replication in reconfigurable organisms

    PNAS、2021年。原論文への案内。出版社本文は未取得。実験の説明は上の研究機関発表に基づく。

更新記録

— 4コマを追加。金属ロボットの想像から、用意された細胞を集めて次の動く集団を作る実験へつなげた。

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