点線の用語は、カーソルを合わせるかタップすると意味が読めます。
「高い場所にいるほうが、時計は少し速く進みます」
そう言われたら、時計の故障を疑いたくなりませんか。
でも、ここで紹介するのは、時計の品質の話ではありません。重力の条件によって、刻まれる時間そのものに差が出るという話です。1
しかも2022年には、ミリメートル規模の高さの違いでも、その差が測られました。
まずは、二人と時計の4コマから
オレンジと青の目印をつけた二人に、登場してもらいましょう。

オレンジの人「置く場所を変えても、一秒は一秒でしょ?」
ふつうは、そう思いますよね。二つの時計を、高い場所と低い場所で比べる場面を想像してみましょう。

青い人「じゃあ、上と下に分かれてみよう!」
ここでは地表近くで、それぞれの高さにとどまる時計を考えます。高い側のほうが、ごくわずかに速く進みます。

オレンジの人「えっ、故障じゃなくて、時間の進み方が違うの?」
ふつうの時計を眺めて気づくような差ではありません。それでも、精密な原子時計の研究で確かめられています。

青い人「この不思議、地図で場所を調べるときにも関係あるんだ!」
GPSでは、衛星と地上の時計の違いを補正します。高さによる効果に加えて、衛星の速い運動による効果も計算に入れます。
人物・建物・装置は、考え方をつかむためのAI生成イラストです。時計の針は測定値を表しません。ここで紹介する2022年の実験は、建物の上下に人を置いた実験ではなく、一つの原子試料の中の高さの違いを調べたものです。 [1] [2] [3]
一秒って、どこでも同じじゃないの?
ふだんの生活では、そう考えて困らないですよね。
ところが相対性理論では、運動や重力の条件によって、時計の進み方が変わります。離れた二つの時計を比べたとき、同じだけ時間が経つとは限らないんです。3
自分の時計が後ろへ回るという意味ではありません。どちらも前へ進んでいるのに、比べると進んだ量が違う、ということです。
高い場所にいる本人が、「今日は一秒が短く感じる」と気づくわけでもありません。手元では、いつもどおりの一秒。別の場所の時計と比べて初めて、違いが分かるんですね。1 3
高さが、ほんの少し違うだけでも?
漫画では建物の上と下でした。では、本当の研究ではどうしたのでしょう。
2022年のJILAの研究では、ストロンチウムという元素の原子を使って、この小さな違いを調べました。原子時計は、原子の性質を使って、時間をとても正確に測る時計です。1 2
一つの原子試料の中で、高い側と低い側を比べています。ミリメートル規模の高さの差でも、進み方の違いを読み取ったという報告です。1 2
地表近くでは、高い側のほうが、ごくわずかに速く進みます。
図の矢印の差は、分かりやすく大きく描いています。実際にこんなに目立つ差が付くわけではありません。
それにしても、遠い宇宙に時計を持っていかなくても、こんな小さな高さの違いを調べられる。測る技術の精密さにも驚きますよね。
そんな小さな差、ふだんは関係ない?
実は、位置を調べるGPSでは、時計の正確さがとても大事です。
NASAの解説によると、GPS衛星の時計は、衛星の運動と重力の条件による影響を受けます。その違いを計算に入れて補正しています。3
「時間の進み方が違う」と聞くと遠い理論に感じますが、地図で自分の場所を知る仕組みにも関わっているんですね。
じゃあ、高いビルに住めば未来へ行ける?
今回の話は、時計で読み取る、ごく小さな時間差です。好きな未来の年を選んで、そこへ飛べる装置ではありません。
それでも、「みんなに同じ量の時間が流れる」という見方を考え直す手がかりになります。
相対論には、高速で旅をする人と、待っている人で経過時間に差がつくという発想もあります。ただし、それを自由に使える旅行サービスがある、という意味ではありません。3
過去へ戻る話とは、何が違う?
時計が前へ進む速さに差があることと、時計を逆向きに進めることは違います。
たとえば二人が別々の速さで歩いても、どちらも前へ進んでいるなら、一人が後ろへ歩いたことにはなりませんよね。時間の差と逆向きを区別するための、簡単なたとえです。
今回測ったのは、進み方の差。過去へ人を送った実験ではありません。 2
SFの「百年後へ行く」と「昨日をやり直す」は、同じタイムトラベルの名前でも、分けて考えたい話なんです。
観測所の「ほぇ〜ポイント」
時間だけでなく、空間にも近道はあるのでしょうか。ワームホールの話でも、物語の夢と実験の中身を見ていきます。